探偵ナイトスクープの感想 『レイテ島からの葉書』2011/01/07 ★7
松尾秘書が読み上げた依頼文を書き起こします。
大阪府・男性 65歳 田村裕探偵
私の心に引っかかっていることがあります。それは新婚5ヶ月で出生した父は私が母のお腹の中に息づいていたことを知っていてくれていたか?ということです
私の父は昭和19年8月に召集されフィリピンのレイテ島に出征しました。私が生を受けた昭和20年1月には既に父は戦死していたと考えられます。女手一つで育ててくれた母の苦労は並大抵のものではありませんでした。
その母も5年前に他界しました。母の遺品を整理していると出征した父から母宛ての古い2通の葉書が見つかりました。その葉書は母が何度も何度も読み返していたらしく、また鉛筆書きということもあってかなりすり減っています。一枚はなんとか読めたのですがもう一枚は殆ど読めません。
しかしそんな中「身重であるお前」と読めるような箇所を発見しましたが確信が持てません。父は母が私を身ごもっていたことを知っていたのでしょうか。父の葉書をなんとか判読して下さいますようよろしくお願いします。
まず依頼者と探偵が局内の会議室に集まり依頼文にある残っている2枚の葉書の状態を確認します。60年以上の長い年月が経過したことによって葉書の色が白ではなくセピア色の写真のように色褪せてしまっています。
探偵が最初に「小さな葉書ではなく大きく拡大すれば文字が判明するのではないか?」と考えてコピー機で葉書を拡大します。元々の葉書サイズ(14×10センチ)からポスター並の1メートルぐらいのサイズまで一気に拡大しました。かなりの大きさに拡大されて依頼者も驚きます。そしてその場で判別できる文字をサインペンでどんどん書き込んでいき解読を試みます。
一通り作業をした結果、確実に判別できる文字が判明するのですが全体の20%あるかないかぐらいのわずかな量です。これでは埒が明かない、自分達ではどうしようもないなということで探偵達は「ビジュアルアーツ専門学校」に移動します。
そしてコンピュータの専門家であるマスコミ編集学科の学科長である福田先生にお願いしてデジタル加工による解読を試みます。
パソコンでスキャンして葉書をデジタル化します。データを拡大すると最も重要な箇所である「身重」の部分が一番シワが多くて判読しにくい文字であることが判明します。
さらに福田先生は「身」の箇所は身ではなく「実」に見えると言います。田村探偵も同じく「僕も実に見えます」と「身重」に否定的な立場です。更に他の部分の解析を進めるのですが、一番判読が難しいラスト4行は完全に消失しており拡大しても完全にお手上げな状態です。
判読が困難なことを受けて福田先生は「古文書でも調べられるところで調査してもらた方がいい」と探偵にアドバイスをします。
福田先生のアドバイスを受けて探偵らは「国立文化財機構・奈良文化財研究所」に移動して専門家にお願いすることになりました。こちらは遺跡から出土した木簡とかそういった古文書を解析したりする研究所なのだそうです。
研究所に到着すると探偵らを出迎えてくれた主任研究員の馬場さんに葉書を渡します。馬場さんは開口一番「これはなかなか古いし、紙悪いし、鉛筆ですね」と不安げな声で言います。探偵はその言葉を聞いてちょっと不安な顔になります。
ただ馬場さんは「鉛筆なので赤外線を使う技術で炭素を強調させることができる」と言い赤外線を使った写真撮影をすることで消えた文字を復活させようと試みます。
赤外線で写真を撮影するとセピア色に色あせた葉書が、文字部分である黒と紙本来の色である白の2色にハッキリと別れて浮かび上がって来ます。更に文字と背景の色を写真加工の技術を用いて反転させると背景が黒になり文字の部分が白く浮かび上がってきます。
そうやって文字を浮き上がらせたり複数の加工した画像を合成したりすることで消えた文字をある程度判別できるようになりました。ここで問題の「身重」の部分を見るのですがやはりこの部分はシワなどが多くてイマイチ判別できない状態です。なかなか難しい状況です。
そうこうしていると研究所でも「ナイトスクープが来た」ということで本気を出したのか馬場さんだけでなく研究所の古文書を専門とするエキスパートが続々と集まって解読の協力をしてくれることになりました。
ここで馬場さんが「ちょっとお時間を頂いてよろしいですか」と探偵に解析する時間をもらいます。探偵らは「どうぞどうぞお願いします。」と言って一旦研究所の外に出て専門家による解析の結果を待ちます。
しばらく外で待って夕日が出始めた頃に「解析結果が出た」ということで研究所に戻ります。研究所で待っていると馬場さんが開口一番いきなり「ほぼ全て読めました」と探偵に言います。これには探偵も興奮して「本当ですか?」と驚きます。
そして最重要であった「身重」の部分を聞くと「まず身重で間違いないと思います」と言います。(この発言のあとスタジオから「えぇ~!」という大きな驚きの声が挿入されます)そして身重だと断言できる理由を言うのですがその理由は「完全に判読できなかった最後の4行に隠されている」と話します。
馬場さんが言うには「最後の4行は辞世というか覚悟に近い気持ちで和歌が3首詠まれています。」と言ってその和歌を読み上げます。
酔ふ心 君に訴ふ事ばかり ただに言へない 吾が胸の内
頼むぞと 親兄弟に求めしが 心引かるゝ 妊娠の妻
この2首目の「妊娠の妻」という言葉で父親が間違いなく身ごもっていることを理解していたことが判明します。
そしてここで改めてほぼ判明した全てのはがきの内容が依頼者によって朗読されます。
インキと煙草を持って来なかった故不自由してゐるよ。やはり持つものは持つべきだね
お前は大阪にゐる時から 出生したらどこかに働きに行くと言つてゐたが、それは許さんぞ。どんあ事があつても 身重であるお前が働きに行くことは許可せん。兎角お互いが元気で会う日迄元気よく日々をすごそうではないか。(ゐ つ は原文のまま)
亦帰れば新婚の様な気持ちで日を送ろう。大三輪神社 思ひ出すよ。八日の晩の映画思ひ出して仕方ない。でもお互いが別れた今は帰る迄仕方ないやないか。何回もいう事であるが、勝手な行動丈は厳禁するよ。(丈=だけ)
酔ふ心 君に訴ふ事ばかり ただに言へない 吾が胸の内
頼むぞと 親兄弟に求めしが 心引かるゝ 妊娠の妻
駅頭で 万歳叫ぶ 君の声 胸に残らむ 昨夜も今朝も元気で。(返信不要)
依頼者は朗読を終えると「なんかスッキリした気持ちでありがたいです。本当にありがとうございます。」と皆さんにお辞儀をします。それを見た馬場さんも目頭が熱くなり感動で泣いております。
そしてそんな二人をみて探偵が「おそらく局長もVTRをみて泣いております。」と言うとVTRが終わりスタジオに映像が移ります。
スタジオに映像が戻ると局長は大泣きです。更に顧問の桂ざこばさんも大泣きですし、松尾秘書も泣いてます・・・というか松尾秘書はあまりの号泣にびっくりするぐらい顔が歪んでいます。
その後探偵から詳細が語られたのですが、手紙はレイテ島に到着する前の台湾から出されているたということです。さらに軍隊経由で葉書を出すと恐らく検閲で届かなかっただろう。だから父親は個人的に台湾の町中から葉書を出すことで無事に届いた(つまりなんとかして父親がこの手紙を届けようとした努力がみれる)とのことでした。